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製造現場の知恵
めっき後のベーキング処理②
2024-04-01
ベーキング処理について②
先日は脱水素処理についてお伝えいたしました。
今回は硬化処理についてです。
硬化処理とはめっき後の製品を熱処理炉などに入れ加熱処理をすることにより、製品(皮膜)の硬度(HV)を上げる目的のために行われます。
弊社では主に無電解ニッケルめっきで硬化処理を行います。
硬化処理の温度は約300℃で数時間(ベーキング処理よりは短め)の時間設定となります。
めっき後の皮膜硬度は約500HVですが、その後に硬化処理を行うことで、約900-1000HVまで硬度が上がります。
この硬化の原因は金属間化合物Ni3Pの析出硬化で皮膜構造が非結晶から結晶化する影響です。
無電解ニッケルめっきはNi-Pという皮膜構造を持つことにより、硬くて耐摩耗性に富み、めっき膜が比較的均一に乗ることから、広範囲の用途で使用されています。
また最近では無電解ニッケルほう素めっき(Ni-B)という浴種のめっきもあります。
このめっき浴は、次亜りん酸塩の代わりに水素化ほう素化合物を用いることによりNi-Bという皮膜構造になります。
Ni-Pに比べ、めっき直後で皮膜硬度が約800HVとなり、同等の耐摩耗性を持つことが知られています。
しかし、水素化ほう素化合物(SBHやDMAB)の単価が次亜りん酸塩に比べ、非常に高価なものとなり弊社では現在導入しておりません。
またNi-Bと同等以上の硬度(約1000HV)を持つめっきとして、硬質クロムめっきがあります。
硬質クロムめっきも硬化処理すればより硬度が上がるのか、という疑問に関しては答えはNoです。
硬質クロムめっきは約300℃の温度環境化において硬度が急激に低下しますので、注意が必要です。